近藤義歯研究所の歯科技工士、小澤さんのインタビューに続き、山本さんにもインタビューをしました。

目次

  1. 患者様が技工士に会うと、こんないいことがあります!
  2. 歯の型取りにかかる時間は○○分です
  3. 実況!お口の型取り
  4. 学生時代、マクドナルドでマネージャーをやっていました
  5. どうして歯科技工士に?
  6. 「自分の歯みたい」嬉しい患者様の一言

―自費の入れ歯は、歯科技工士さんの立ち合いもあると聞きました。患者様が目の前にいるということは、技工士さんにとってどういうプラスになるのですか?

入れ歯に関しては、ラボ内(歯科技工所内)だけで仕事をしているのと明確な違いがあります。
患者様にお会いすると、歯科技工士は「患者様の筋肉が動いている状態」を目の当たりにできます。
入れ歯は「動くものに対して、どうお口の中で安定させるか?」なので、歯科技工物のなかで実は一番難しいのです。

総入れ歯をイメージしていただきたいのですが、入れ歯は「歯ぐき」という粘膜の上に乗っかっています。
「固い」歯ぐきの上に乗り、且つ「柔らかい」周りの頬の咬筋(こうきん:下記図参照)や、ベロに包まれています。

「何かに固定されているもの」ではないのです。
差し歯(詰め物、かぶせ物)は、固いもの(土台や自分の歯)にセメントで固定するものですよね。
そこが「入れ歯」と「それ以外のもの」との明確な違いです。

―動いているところに固定するって・・・難しすぎですよね。

そうなのです。
「その人の筋肉の動きの限界エリアに収められれば、いろいろな筋肉の動きがあっても安定する」という考えに基づいて、自費の入れ歯は作ります。
上顎骨(じょうがくこつ)に対して、下顎骨(かがくこつ:下アゴ)は柔らかいつなぎがあるだけのブランコみたいなものです。

それが長い年月を掛けて、歯がなくなって、顎位(がくい:アゴの位置)がずれ込むことでお顔がクシャっとなる方もいらっしゃいます。
歯がなくなったことで本来の歯があった健常な位置から、不正な位置になっている状態です。

それを歯があった頃の位置に分析して戻して、患者様がリラックスして噛める位置にする・・・それを「中心位(ちゅうしんい)」といいます。

―歯がなくなると、アゴの位置、噛み合わせが、変わってきてしまうのですね。

そうです。
口の中を見なくても、お使いの入れ歯の形を見て「これは辛かっただろうな」と思うことがあります。
総入れ歯でいうと、平均的な部分が逸脱して「厚すぎる」「長すぎる」など入れ歯を見ただけで分かります。

―患者様にお会いして作った入れ歯と、そうでない入れ歯の違いはありますか?

実際に患者様にお会いしないと分からないところは、あります。
日本人は「グラインディング」と言われる、グリグリ回すような食べ方をします。
欧米人は、食べ物に対してまっすぐ噛むような傾向が強いです。
1人1人が違う噛み方をします。

先ほどお話ししたように、歯がなくなって中心位からずれてきている状態でどういう噛み方のエラーを起こしているのかというところですね。

あとは、よくあるのが一点に集中していない、ということです。

―一点に集中していない?

歯があると毎回噛むところは一点に集中、つまり上の歯と下の歯で噛むところが同じなのですが、歯がなくなるとどこで噛めばいいか分からないので、無意識に一点に集中しない状態になります。

歯は一本ずつ抜けていきますが、人は残っている歯で噛もうとするので、どんどんずれて、減ってずれて減って・・・というスパイラルに陥ります。

お顔を拝見すると、噛み合わせが低いことが多いですね。

―患者様に会うということは、かなりの情報量がある訳ですね。

患者様が目の前にいて読み取れることは多いです。
見て、聞いて、入れ歯を使ってみて・・・何をどうした時にどこがどう痛いのかを知れると、入れ歯にも反映できると思います。

―「聞いて」というのは、何を聞くのですか?

患者様の気持ちを汲み取る、ということです。
佐藤先生は患者様の話をしっかり聞くので、自分の目でフワッと診断しての治療はしません。

「実は、こう思っていたけど先生に言えなかった」という患者様も実際いらっしゃいます。
私達は入れ歯をただ作るだけでなくて、患者様のお悩みもお聞きます。

入れ歯の治療は先生にお任せするのですが、入れ歯作成の際の歯ぐきの形やアゴの関係など、私たち歯科技工士は先生とで「チーム医療」をします。

―職人肌で無口で黙々と仕事をする従来の歯科技工士さんの概念と違いますね。入れ歯を作るだけじゃなくて、患者様との接点のある技工士さん、ということですね。

歯科医師のサポーターとして、また入れ歯というという点においてはプロフェッショナルとして患者様とお話しできればと思います。

―何て心強い言葉!すごい!ちなみに技工士さんに会えるのは、何回ですか?

基本的には3回です。
「型取り」と「試着」と「完成」の時ですね。

―「試着」という表現、やっと分かりました!今まで入れ歯の「試適(してき)」という言葉は聞いたことあり、なんだろう?とずっと思っていました、試着のことなのですね!

患者様には、そうお話ししています。
「試適」は専門用語ですので分かりづらいと思います、仮合わせともいいます。

―分かりやすい言葉、助かります!歯の型を取る際、すごく長時間口を開けているというイメージなのですが、どれくらい時間が掛かりますか?

基本的には、上下で2時間ほど頂いています。
患者様、すごく疲れると思います。

―2時間(120分)!?患者様も体力も気力もいりますね。

中には不安がある方もいらっしゃるので、「今日は長丁場で、お口をいっぱい動かしていただきますね」とお話しします。

総入れ歯だと、ベロや頬など動くものに頼らないといけないので、患者様の型取りの筋肉の動きがすごく大事です。
患者様に本気で動かしてもらうのですよ。

―お口を本気で動かす?どんな風に患者様にお願いいするのですか?

具体的には僕が実際に患者様の前に立って、僕の口の動きを真似していただきます。
思いっきり「いー」って、引っ張ってください。
思いっきり「うー」で、すぼめてください。

思いっきり「おー」と、すぼめてください、はい頑張って~!と。

―「イーウー」を何分くらいやればいいのでしょうか?

柔らかい印象(いんしょう:型を取る時に使う粘土のようなもの)を入れて、上と下と両方取ります。それが出来ないと安定しないです。

―保険の入れ歯では、そんなことはしないですよね?

しません。 保険は、「アー」と開けた状態で固定し、既成のトレーで型取りします。

自費の場合は、患者様専用のトレーを使うので、既成のものとは使用感が違います。

―自費だと、動的印象(どうてきいんしょう:「イーウー」とやる歯型取り)は普通ですか?

いいえ、普通ではありません。
型取りは治療の一環なので、先生にご判断いただくところです。
先生にどういうことをすればうまく取れるのか?を専門家の視点からアドバイスさせていただくことはあります。

例えば、温度により「印象材」という型取りの材料の膨張度も違います。
印象材の管理を徹底すれば、一年中安定した型が取れます。

例を挙げると、夏で温度が上がるとシリコンの型は固まるのが早いので、冷蔵庫で保管しておいた方がいいですよとお話しします。

本当に型取りだけでもいろいろあります・・・撤去するまでの時間、それを守れているか、そういうノウハウも技工士がお伝えします。

学生の時に、マクドナルドでマネージャーをしていたのです。
マクドナルドへ行くと黒い服を着て一人偉そうにしているの、いるじゃないですか。(笑)
あれをやっていました。

―どこのマックですか?というか、どちらのご出身ですか?

小田原の方の開成町というところですね。
アルバイトをしていたのは、足柄上郡で、マクドナルドの中で全国売上5位という店でした。
高速道路から近い、交通の便のいいところです。

―マネージャーは、どうやったらなれるのですか?

「やってみないか」という社員側からのオファーをいただき、3日間新宿の本社の研修に行くとなれます。

―お眼鏡にかなわないと、なれないですよね。

確かにそれなりに幅広いことをやれないと、声は掛かりませんね。
僕がいたマクドナルドはドライブスルーが3列あったので、車の列が道路にはみ出てないように、臨機応変に指示をしていました。

―何で歯科技工士になろうと思ったのですか?

最初は高卒で就職を考えていたのですが、母親が「小さい頃から細かいことが好きだったから、手先の器用さを生かして専門技術を身に着けて、専門職になるのはどう?」と話している中で「歯科技工士」という職業を知ったのです。

―確かに高校生は普通「歯科技工士」という職業を知らないですよね。

ですよね。
それと、行きつけの歯科医院が、たまたま患者さんに石膏模型を渡していたのです。
子供は、そういうのを貰うと嬉しいじゃないですか。

自分も小さいころに貰って、歯科技工士を知るキッカケになって「あ、入れ歯作ったり差し歯作ったりしているんだ」と認識していました。
そして、歯科技工の学校見学に行き「行きたいな」と思い、学校に通いました。

―お母様、喜んでいますか?

やりたいと思ったことを迷わずにやれているので、「うちの息子、大丈夫かな?」というような不安はないと思います。

―「やりたい」って気持ちがすごく大事だと思います!と、左手の薬指に指輪をしてらっしゃいますが。

今、結婚して1年半ですね。

―なれそめは?

嫁もここにいた技工士です、社内結婚です。
今は別のラボで働いています。

―うちでの会話で、歯科技工の専門用語、飛び交います?

そうですね。
確かに、普通の夫婦の会話でこんな単語出てこないなということはありますね。(笑)

―休みの日は何をしていますか?

最近は、家事や筋トレをしています。
学生時代はバスケットやっていましたが、座り仕事なので筋肉を戻さないと思っていまして。

―どこかのジムに行くのですか?あと、家事は何が得意ですか?

自宅にダンベルとベンチがあるので、自宅で筋トレします。
家事は料理が好きで、得意料理はペスカトーレです・・・あ、上手だと思われると困るので、パスタと書いておいてください。(笑)
妻も結構好きで、よく食べてくれます。

―印象深い患者様は?

―合わない入れ歯を我慢して使うのは当たり前と思っている方、多いと思いますが、そんな方に一言お願いします。

専門知識をもとに専門家として、入れ歯のお悩みを伺います!

―将来の目標、ビジョンは?

近藤義歯研究所の一員として、また立ち合いをするメンバーなので、会社の一つの顔としてより患者様と先生に入れ歯の事、お伝えできればなと思っています。

―佐藤先生はどんな方ですか?

本当に器が広くて「患者様の悩みを解決してあげたい」という姿勢が、私たちの目から見ても感じられる方だなと思います。
本当に患者様に寄り添って話を聞こうと思うドクターは、実のところ少ないと思います。

―さとう歯科クリニックに相談しようかどうか悩んでいる人に、一言おねがいします。

インタビュー2023/11/17

【先生からひと言】

技工士の山本さんは、どうしたら患者様にとって最も良い義歯ができるか一生懸命考えてくれて、義歯に対しての情熱を話していてとても感じられます。
そして、優しい笑顔で患者様をリラックスさせてくれます。
あと、良い声をしてますよね!
お年寄りの患者様に伝わりやすい声と喋り方なので、安心できます。

取材後記

毎度思いますが「餅は餅屋、入れ歯は入れ歯屋」だということです。
歯の治療の中でも、入れ歯は特に奥が深い=難しい、のだと思います。
先生と技工士さんの二人三脚「チーム医療」が大事で、どちらも本気だということがよく分かりました。

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