佐藤摩理亜 さとうまりあ
目次
- 不安なのは分かります、すごく
- どうして歯科医師に?
- 「おせんべいやお新香をぱりぱり食べたい!」「大好きなお肉を思いっきりたべたい!」近藤さんの入れ歯ならできます!
- 「歯科感染管理者」がいます
- 患者さんにメッセージ
1.不安なのは分かります、すごく
―先日「入れ歯相談会」の際、「今まで何件もの歯科で治療してきて入れ歯もその都度作ってもらってきたが、痛くて噛めないという事を中々言いづらくなり、転々としてきた。美味しく何でも噛めるようになりたい。」と切実に患者さんが訴えておられました。
年配の方であればあるほど先生への敷居が高く、何でも相談出来ずに悩んでおられる方が多いんだなと改めて感じました。
あの方はご苦労されて大変でしたね、歯医者通いで苦労された歴史をお話しして下さって・・・。
相談後、元気に笑顔で帰って行かれたから本当によかったと思います。
―先ほどインタビューした酒井さんが「笑顔で帰ってもらいたい」と言ってたので、まさに笑顔で帰ってもらってる現場を目撃しました!
毎回ご心配で、治療が終わるたびに鏡で「みせてほしい」とおっしゃるので鏡をスタンバイしておきました。
治療のステップのたびに「こうなっています」とご説明しながら進めています。
―鏡で確認しながらの治療は、なかなか大変だと思うのですが。
不安なのは分かります、すごく。
だって口の中って見えないじゃないですか、何されているか分からないし。
だからこそ、一つ一つ丁寧なご説明と患者さんが安心してご納得して頂くことが大切だと思います。
2.どうして歯科医師に?
―ご出身はどちらなんですか?
新潟県なんですが、親戚が大勢住んでいるのは阿賀野市・・・昔は北蒲原郡でしたね。
白鳥の湖、瓢湖(ひょうこ)という湖のそばに母の実家がありました、そんなところで遊んでました。
―どんな少女時代?
小学生の頃は、野原で遊びまわっていた子でしたね。
近所の子と空き地でこんにゃくボールという軟らかいボールで野球したり、探検ごっこしたり・・・おままごととかあまり記憶にないんですよ。
冬は雪が降るので雪遊び、週末になると家族で湯沢までスキーに行ってましたたね。
―何か没頭したことはありましたか?
中学生、高校生の時は人並みにアイドルが好きでした。松田聖子さん好きです、今でも!
テレビにラジカセ向けて録音して、歌マネするんですよね・・・ベストテン、夜のヒットスタジオ、見てましたね。懐かしいですね!
―私も見てました!(笑)そんな先生がどうして歯医者さんを目指したんですか?
父が内科医だったのでなんとなく「医療系に進むかな」というのは中学生くらいから思っていました。
うちの父はかなり熱い人で、患者さんと一生懸命向き合うドクターだったんです。
「ドクターとは、検査や画像の結果だけで診断するのではなく、患者さんとはじっくり話して、そして診て触って診断するものだ」と父は昔から言っていたんです。
中学生頃から「そういう仕事いいな」と少しずつ考え始めました。その教えは今でも実践出来たらいいなと思って努力しています。
―だから患者さんの話をじっくり聞けるんですね。お父様の背中を見て・・・点が線になりました。
ありがとうございます。
熱い人でしたね、医師としては。
職を失った高齢の方に職を見つけてあげるくらいで・・・患者さんも相談しに来たりするんです。
父が仕事を紹介して、その仕事に就きました!って写真送っていただいたりして。困っている人を放っておけないんですね。
そういうのをずっと見ていたので、父として医師として尊敬してます。
そういう治療しか見てこなかったので、そういうのが当たり前と思っている節はあります。
父は小さい町医者で亡くなる直前まで診療していました。
―「医は仁術なり」を地でいってますね。先生は、入れ歯に力を入れていると伺ってます。大学で勉強したのは入れ歯だったんですか?
歯科大学での勉強は、全科を総合的に勉強するんです。
大学に残り、専門医をめざす人もいるんですが、私は大学を出てすぐ先輩の歯科医院で5年間修業したんです。
そこの先生が義歯(ぎし:入れ歯)の大好きな先生だったんです。
「いい入れ歯を作るためには、患者さんとのコミュニケーションと生活背景を知る事が重要だ」という教えの先生だったので、それを見てきまた。
義歯治療というのはとても奥が深く、義歯治療のおもしろさを学べました。
5年間勤めて、子供が出来たので、退職して開業準備しました。
うちの子が生まれて、1カ月後には開業準備して、半年後には縁あって小岩で開業することになりました。
―さとう歯科クリニックは、お子さんと同い年ですね。
平成13年3月オープンです。
子供が生後半年でしたので、おばあちゃんに預けて仕事をして・・・
子供の成長と同じく、あっという間に時が経ちました。
3.「おせんべいやお新香をぱりぱり食べたい!」「大好きなお肉を思いっきりたべたい!」近藤さんの入れ歯ならできます!
―御院が入れ歯を頼んでいる歯科技工所「近藤義歯研究所」のことと「BPS入れ歯」について教えてください。BPSって入れ歯界で有名なんですか?
そうですね、BPSデンチャー(デンチャー=入れ歯)をやっている有名な先生が世界中にいらっしゃるんです。
近藤義歯さんは、BPSデンチャーをやりやすいようにオリジナルにアレンジしています。
患者さんの負担が少なく治療ができるよう研究を重ね、独自の開発した方法でやっています。
―BPSデンチャーと他の入れ歯との違いはなんですか?
決定的に違うのは、患者さんそれぞれの理想的な本来の顎の位置や噛み合わせを正確に回復できることです。
正確に回復することにより、何でも噛める入れ歯を作ることができます。
その為に、噛み合わせを測定する近藤義歯さんのオリジナル測定器を使います。
―ゴシックアーチトレーサー(下記写真)ってやつ、ですか?
そうです。
そして、技工士さんが立ち会って実際に患者さんと接し、ドクターと一緒に入れ歯を完成させていくという方法をとっています。
入れ歯を製作する技工士が患者さんと話し、今までお困りの事や、何を必要としているかを直接現場で聞き、治療に立ち会い、どういう入れ歯を作っていくかを近藤義歯研究所で症例会議をして製作していきます。
―入れ歯を使う方はどんな方か?が分かるだけでも違いますよね。
近藤義歯研究所さんと出会い、今は情報を共有でき、患者さんにご満足頂ける入れ歯を作ることができます。
―患者さんって、疑心暗鬼で来ている人が圧倒的に多いと思います。先生の生い立ちや思いを聞いてどうして親身になれるのか?が分かり、腑に落ちました。
例えば、自分の親が入れ歯を作るのに先生に160万円(上下リハビリ用の義歯が必要な方で1番高額な入れ歯です。)掛かるといわれたら「え~!」って思いますよね。ご家族はこの先生の話を聞けば「なるほどこういう先生なのか」と納得できると思います。
初めて入れ歯相談会に来る人は、いきなり総入れ歯で百何十万円の値段を見せられて「何この金額?」って思いますよね。
過去にいらした方が家に戻られて家族と相談した時、「やめとけ、年なんかだら。保険で十分」と。
入れ歯を使うのはそのおばあちゃまなのに・・・と思ったんですけど、高額なのでご家族が入れ歯の大変さを分からないとストップが掛かりますよね。
ホームページを見ていただいて理解していただけたらいいですね。
―食べられることの大事さ、エビのてんぷらの皮をふやかしてしか食べられない話、衝撃でした。
入れ歯でないご家族は理解できないのですが、入れ歯が合わないことは身体の健康と関わる大変な事なんです。
入れ歯になってから「サクサク」という食感を味わったことない、お新香をパリパリと噛んだことがないという方が多いです。
今、サクサク目指して入れ歯を作っている方がいますけどね。
―具体的には、何を食べたいんですか?
唐揚げです。
唐揚げの皮のサクサクが好きだけど、今は皮だけをはがして、ちょっとふやかして味わっているそうです。
―食べたいものの目標があると治療、頑張れますよね。
お肉ごと大きな唐揚げを噛むというのは、義歯では難しいんです、確かに。
近藤さんの義歯なら、出来ます。
―実際に治って、バリバリ食べてらっしゃる方もいるんですか?
いますいます。10数年ぶりにおせんべいを食べた方とか、大好きなお新香をいつもしゃぶっていたけど、BPSデンチャーを入れてからパリパリと食べられるようになったとか。
―治療期間はどれくらい掛かりますか?
総入れ歯だと意外と早いんですよ。
残存歯(ざんぞんし:残っている歯)の被せ直しすると時間が掛かるので、長い方だと3~4カ月ですね。
被せ物を治す治療は週1回ペースでいいんですけど、金属の入れ歯の場合は鋳造(ちゅうぞう:金属を熱で溶かし、鋳型(いがた)に流し込んで作ること)して入れ歯を作るので、制作時間がかかります。
だいたい2~3週間掛かり、制作する間は待たなければいけないので、その分長くなります。
―来院回数はトータルで8回くらいですか?
ただし、前の入れ歯の噛み合わせがあまりにも悪い方は、新たな正しい噛み合わせでの入れ歯を使いこなす為のリハビリ期間が必要です。(後述)
リハビリ無しの総入れ歯であれば、5回程で完成します。
―合わない入れ歯だと、噛む筋力が落ちていると聞きました。その筋肉ってどれくらいで戻るんですか?
現在の咬合力(こうごうりょく:噛む力)、年齢によりますが、年配の方だと時間かかりますね。
噛む力が弱っているので、食べることが疲れるんですよ、みなさん。
食べることに時間がかかって疲れる、それで少量になっちゃうんですよね。
食べる量が少なくなれば体の筋力も落ちますし、やがて立って歩くことも大変になりますし、負のスパイラル・・・これをフレイルっていうんですけど。
―フレイル?
歯科領域では、オーラルフレイルと言いますが、噛む・飲み込む・話すための口腔機能が衰えることを言います。(早期の重要な老化のサイン)
これらを放置すると将来、身体機能の低下の原因にもなります。
「何でもしっかりと噛んで食べられる」ということは、健康で長生きする為にとても大切なことなんです。
合っている義歯を入れると、いきなりおせんべいが食べられるようになったりするんですよ。
何でも食べられるようになり、食べる量が増えて「太っちゃった」と嬉しそうにおっしゃる方もいます。
いいお顔になって、若返ります!
―あらステキ!
プチ整形した?って友達に聞かれた人もいます。
ゴシックアーチトレーサー(アゴの動き写し取る)でアゴの動きをしっかり採って、無理のないアゴの動きが出来るようになったら、噛めるようになるまでそんなに大変じゃないです。
―筋力回復のために「リハビリ入れ歯」というのがあると聞きました。
今まで使ってこられた入れ歯の噛み合せが悪い場合、しっかり噛んでいないので、噛む筋力が衰えて違ったアゴの位置で知らず知らずのうちに噛んでいます。
急に正しいアゴの位置と噛み合せで噛むことは難しいので、リハビリ期間を作ります。
リハビリ入れ歯を作る時も、ゴシックアーチで取って作るんですよ。
普通の歯より溝の浅いリハビリ入れ歯(画像左)で頬や噛む筋肉を整えて、リハビリ期間が終わり新たにゴシックアーチを取ります。
この時点でとてもスムーズなアゴの動きができ、より正しいゴシックアーチが取れます。
本番の入れ歯(画像右)を入れると無理なく食べられるようになります。
リハビリは、若い方だと3カ月、難しい症例だと半年掛かります。
―若いって、どれくらいの方ですか?
60代、70代くらい方、皆さんお若いです。50、40代の方もいらっしゃいます。
―先生、咬合器(ごうごうき)というものがあると聞いたのですが。
これが咬合器です。ゴシックアーチで測定した情報をここで再現します。
患者さんのアゴの動きを再現するということです。
―(はめたのを見せてもらう)うわーすごーい!
本当にスッと入ります。
近藤義歯さんは、入れ歯を作るのが本当に上手なんですよ、金属床は鳥肌立つようなピッたりさです。
患者さん、すごいキレイな歯!って喜んでくださいます。
―持たせてもらっていいですか?(持ってみる)軽い!
これは、チタン金属で出来た義歯で、薄くてとても軽く着け心地がいいです。
4.「歯科感染管理者」がいます
―では今度は院内感染について伺います。さとう歯科クリニックさんは「歯科感染管理施設」に認定されているとのことなのですが、詳しく教えてください。
第二種歯科感染管理施設認定書
第一種歯科感染管理施設認定書
コロナ禍になり、何が危ないのか?どこまで消毒したらいいのか?という正しい情報が何もなかったので、感染対策についてキチンと学んで「正しく恐れたほうがいい」と思ったんです。
コロナ禍の初期の頃、歯科はエアロゾルがたくさん発生して、感染しやすいなどのうわさが流れ、衛生士が退職した医院さんもあったそうです。
それで「正しく恐れるためにしっかりと勉強しましょう」ということで、検定を受けました。
患者さんも不安でしょうし、安心して来院して頂けるように、ココに居たらまず感染しないというくらいの環境を作りたいなと思ったんです。
―先生方以外に有資格者が2名いらっしゃるんですね。
はい、一級も取ったので「院内感染マニュアル」を作りました。
何度も打ち合わせして、画像を取り込んでパソコンで文章を作るとかやったことなかったので、まるまる1カ月以上かかりました。(汗)
―ただマニュアルを作るだけじゃなくて、誰が見ても分かるようにすることが大事なんですね。知る事って大事ですね。
これが「感染対策マニュアル」です。
標準予防策(感染症の有無に関わらず、全ての人に対して感染の可能性があるものとみなし対応する。)を基に徹底した感染対策をしております。
マスクの付け方とか、手洗いの仕方、汚れやすい部位、感染経路、道具の使用済みから使用できるまでの洗浄・滅菌・消毒の流れを細かく書いています。
よくある感染症、新型コロナウイルス濃厚接触者の定義なども書いてあります。
―その内容は他のスタッフの方にも共有されているという事ですね。
スタッフ皆に配布し、勉強会も実施しています。
5.患者さんにメッセージ
―休みの日は何をしていますか?
娘と美術館巡りをしたり、お酒を飲みながらドラマや映画を見たりします。
―好きなお酒の種類は?
焼酎が好きですね、麦か米が好きなんです、それをロックで頂きます。炭酸で割るのも好きです。
家事を終え、家族がが寝静まった後に、真夜中にドラマ見ながら飲むんです。(笑)
最高のひと時です。
―患者さんにメッセージおねがいします。
ご不安なこと、何でもご相談ください。そして安心して治療にいらしてください。
一緒に何でも噛める健康な環境を作って行きましょう!
取材後記
さとう歯科クリニックでは、入れ歯は近藤義歯研究所さん、詰め物被せ物は他の技工所さんにお願いしています。
それぞれの技工所の得意な分野を知ってお願いするという手間を惜しまないんだなあと思いました。
また、言葉遣いの端々におもてなしの心が感じられ、患者さんにとことん寄り添ってくれる先生だなと思いました。
インタビュー:2022/7/7